石射猪太郎 松岡にドン引き

石射がサンフランシスコでの勤務が決まり、当地へ向かう時(船上)の話。



「パリ講和会議息の牧野全権とその随員一行が同船なので、横浜埠頭は見送りの人の山を築き、華々しい出帆光景であった。

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内外人多数を乗せて船中は賑やかであったが、際立って周囲をにぎわせたのは松岡洋右氏であった。全権一行様に設けられた談話室に、ある日顔を出すと、牧野全権ほか数人を相手に、松岡氏が独りで喋り散らしている。話題は性問題でないよう怪奇を極めたものであった。牧野さんは聞いているのかいないのか、無表情な顔をしておられた。この長老をいささかも憚らないで怪奇な説を吐くのみか、やがてソファーにふんぞり返って大いびきを立てた松岡氏の傍若無人ぶりは私の驚異であった。」



出典：『外交官の一生』石射猪太郎